子どものADHDでは特に、親の対応が変わることによって、子どもの行動も変化することが知られています。たとえば、これまで悪いことをしてもなかなかあやまることのなかった子どもに対して、「あやまる」という重要な社会的スキルのめばえを見落とさずに肯定的に注目し評価することで、子どもは「あやまることは大事なんだ」と思うかもしれません。一方で「もっと心を込めてあやまれ」という否定的な注目を行うと、子どもは「二度とあやまるもんか」と思うかもしれません。このように同じ状況でも親の声のかけ方によって、その後の子どもの行動が大きく変わってくる可能性があります。
ペアレント・トレーニングとは、上に例を挙げたように、親がほめたり、注目したり、評価したりするポイントが変化することによって、子どものよりよい行動が強化され、相対的に問題となる行動が減っていくことを目標としたプログラムです。ADHDをはじめとした神経発達症の子どもたちには有効な場合が多いと言われています。
最近では学校や保育園や幼稚園の先生方に向けたティーチャー・トレーニングも行われています。またおとなのADHDの場合にも、本人の適応的な行動の芽生えに注目し、望ましい行動に「承認」、「称賛」、「感謝」を与え、強化するというペアレント・トレーニングの考え方は有効となります。